Oh!X 1993/12号より〜
コナミ直撃インタービュー「悪魔城ドラキュラ」開発者に迫る
ヒット作「悪魔城ドラキュラ」はどのように企画,制作されたのでしょうか 昔段、ゲームを遊んでいるだけでは,その内部事情を知ることはできません そこで、開発に携わった方に直接インタビューを試みてみました メーカーが商品としての作品をどのように形成していくか注目してみましょう まず,悪魔城ドラキュラをX68000に移植する際に,X68000ならでは というコンセプトがなにかあったのでしょうか? まず,我々はファミコンのディスクシステム版がいちばんよかったと思って いたんです。ですからシステム的には古いんじゃないか,という意見もある でしょうが,ファミコンのディスク版のよかったところをX68000にもってきたら どういう表現になるか,ということをわりと念頭に置いて開発していきました。 それから,X68000にある機能を引き出していこうということで,見た目の 表現などでX68000ならでは,といえるものを盛り込んでいきたいとも考えて いましたね。そして,開発中にX68030が発表になり,当然それでも動くように したいと。さらに,いままでX68000で遊んでこられた方と,新しくX68030で 遊ばれる方とでちょっとした違いを見せてやりたいということで,ある部分の 動きが非常に滑らかになったりだとか,いろいろ心がけるようにして制作して あります。 具体的には時計塔の歯車とかですよね。 そうですね。あとわかりやすいのは噴水でしょう。あれは,処理速度が速い マシンによって流れるスピードが速くなったりしていますね。あと,先のほうに ある炎の揺らめきもよりスムーズにさせたり,細かいところで気を配っています。 実際の開発期間はどれくらいだったのでしょうか。 これは通常お答えしていませんね。まあ,それなりに時間はかかっています。 人数についても同様に具体的なことはいえませんが,いわゆる家庭用ゲーム機 と同じような感じで開発を行っています。ただ,X68000だからといって特別 多くのスタッフを用意したり,逆にいままでに比べて少ない,というようなことも ありません。コナミの名前に恥じないものを出したいということで,スタッフも ほかに比べて遜色のない人間を配置しています。 開発後記を覗いてみたんですけど,なにやらいろいろなことが行われて いたようですが……。 いや,まあ,いろいろと書いてます。彼らのなかには私がいったことと近い 意見をもつ者もいますし,技術指向の奴はとにかくなにかひとつは驚かせる ものを入れたいということで足っている者もいれば,ゲーム性だけを気にして いる者もいます。まあ,それは各個人それぞれ個性がありますから,そういった ものを最終的にひとつの商品という形にまとめるため,開発者たちの意見を バランスよく取り入れて制作を行っていましたね。 「悪魔城ドラキュラ」では,演出というか見せ方が非常にうまいと思うの ですが,そういったアイデアは,チーム内で協議して決めていくものでしょうか? チームというよりは,作っている人間がどういうふうにしたいかを提案し, その意見がダメなら再度考え直したりボツにしたりしています。限られた 期間内に企画書どおりに作ればいいというんじゃなしに,実際やってみて 面白くなければポツにして,再度それに合うようにどうしたらいいかという 具合に検討を重ねていってます。もちろん,企画段階での基本路線は ありますが,実際に制作して遊んで面白くなければ修正したり,ボツにしたり, あるいは途中で急遽別のアイデアが採用されたりすることも当然あります。 そのなかでも,やはりいいものが最終的に残りますね。 そのあたりでの苦労話があればお聞かせ願いたいのですが。 まあ,みんな発想がいろんなところからあって内部受けだけするようなアイ デアばかりを出したりだとか,商品として見たときに「おまえらこれやめろ」 というようなものが知らないうちに入っていて,最終段階で見つかる場合も あります。そういうものは,私がチェックするまでみんなで見ながらわいわい 騒いでいるわけですよ。もちろん,開発者本人も冗談としてやっていると 思うんですけど。まあ,開発しているときは,みんなで楽しくやっているときも ありますが,苦しいときも当然あります。気紛れのこういった冗談によって 全員がちょっと和やかになれるといった効果もあって,ヘタをするとずいぶん しつこく聞かないと,どこになにを隠されたかわからない状態になっている こともあります。そこで,最終的には「すべて白状せい」という具合にチェックを 進めていかないで,放っとくと怖い部分もありますよね。 確かに内輪受けというのは,当事者以外の人間には受け入れられない ことのほうが多いですからね。 しかし,反対にそういったことをやりながら,ひょいと面白いアイデアが出 てきたりもします。遊びといってはなんですが,いろいろなことにチャレンジして アイデアが集まってくるという感じですね。それに,今回の「悪魔城ドラキュラ」 の基本的なアイデアは,美化されているディスク版のイメージだったんで, それに太刀打ちするためにはすごく苦労しています。そういう人たちが商品を 見て,「なんやこれX68000になってもダメじゃないか」なんてことをいわれ ないためにも,企画とか調整投階で苦労しました。 X68000版のユーザーからの評判とか反響はどうですか? いいですよ。ユーザーからのアンケートハガキを見ても結構いいですし。 ただ,我々がX68000ユーザーを想像すると,みんなマニアですごくうまいと 思っていたんです。なかにはやはり2ステージ以降うまく進めないといった, その人にとってクレームといえるものもありました。しかし,最後まで何時間で クリアしたとか,とても楽しめたというハガキが大半でしたので,ユーザーに 喜んでいただいて,制作者としては非常にありがたいと思っています。 どうしても商品を出すときには買ってくれた人のなかに,「このゲームなんで 出したんだ」とか思う人がいるわけです。ユーザーの意見は千差万別なんで どちらの比率が多いかによるんですが,ひとりでも多く,買ってくれた人が 喜んでくれると嬉しいですよね。 やはりX68000ユーザーの反応は,ほかの機種と違うものなんで しょうか? やっばりマニアックですよ。これははっきりいえます。そんななかで,ひと つ嬉しかったのは,X68000ではすごく業務用のコンバートを望む声が 多かったんですよね。それ以外は買わない! というようなイメージが あったんですけど,それからすると,家庭用ゲーム機からのコンバート ではなく,新たなオリジナリティを盛り込んで制作された「悪魔城ドラキュラ」が ユーザーに受け入れられたこともあり,これをテーマに選んでよかったな, と思うところもありました。 今回の「悪魔城ドラキュラ」のようにオリジナリティを加えた作品が 受け入れらたということで,今後も開発についてはオリジナルという要素を 考えて,作品を制作されることはあるのでしようか? それをやるときには,業務用の移植だけでなく,あくまでもX68000の ユーザーに十分満足していただけるものであれば,オリジナリティがあっても 問題はないと考えてはいます。 また,X68030が登場していますが,やはり今後もX68000の 10MHzを基準にして開発を続けれられるのでしょうか。 もちろんX68000用の商品を作るのでしたら,そうしなくてはならないでし ょうね。もしも,X68030専用のゲームを出したとして,買いたいと思っている ほとんどのユーザーさんがそれを遊べるんでしたら問題はないのですが, 普及台数の問題もありますし,まだそこまではいたらないと思うんですよ。 となるとやはり,「悪魔城ドラキュラ」のように機種によって差別化を 図っていくと‥‥‥。 余裕があれば対処しますが,処理速度によって変えていこうとすると, いろいろな手間がかかりますからね。 X68000ユーザーは,そういうちょっとした気配りに敏感な人が 多いので,ぜひがんばってもらいたいですね。それでは,最後の質問ですが, 次回作についてはどうでしょうか? それについては,まだなにもいえない状態です。時期がくれば発表させて いただきますよ。 では,コナミさんの作品に期待を寄せているユーザーのプレッシャーに 負けず,がんばってください。 |