Oh!X 1992/5号より〜
ゲームメーカー・インタビュー 〜コナミ〜
4月号で発表した「GAMEOFTHEYEAR」で,ゲーム大賞はもちろん,3,6位にも 食い込むという頑張りを見せたのが,皆さんご存じのコナミ。昨年の1年間で 3作を発表し,なおもすべてクオリティが高いという大車輪級の働きのうえ, 今年も早々に「グラディウスU」を発表し,驚嘆の声があちこちで聞かれる。 そのコナミに「GAMEOFTHEYEAR」入賞の報告方々、取材を行うことが できたので,紹介しておこう。今回お話をうかがうことができたのは,開発の HALさんと,サウンドデザイン担当のIKAChanのおふた方である。 まずは,おめでとうございます。やはり自信はありましたか? いいえ,ほかのタイトルの追い上げもあり,また,読者の方が選ぶという ことですから,自信を持っていたわけではありません。 X68000用の「パロディウスだ!」を出したときの状況をお聞きしたい のですが,開発,販売に至った要因はどういったところにあったのでしょうか。 アンケートハガキなどでのユーザーの希望と開発者の思いが一致したと いうことです。本格的に取り組むのに適したタイトルでもありましたし, 「クォース」でだいたいのハード特性はつかんでいましたので.技術的な 間題は作りながら解決しようかなと。なによりも皆さんに喜んでいただけると 確信しましたので。 今年発売された「グラディウスU」を含む移植作品3つはどれもほとんど 完全移植といってもいい出来だと思うのですが,作った側としての手ごたえ というのはどうでしょうか。 X68000は作り手を鍛えさせてくれるハードウェアだといえますね。 「パロディウスだ!」はたぶんできるだろうと,軽いノリで始めたら行き詰まって しまいました。途中,それまで作っていたものを一度ボツにしなければならない ほどでしたから。でも,そのおかげでハードウェアとしてのX68000の使い方が よくわかり,そのあとの開発ノウハウになりました。 ほとんどというと,80パーセントとかまでいったんですか。 動きがままならず,満足いかなかったものですから,そこから全面作り直し ということになりました。 ほかになにかたいへんだったことは? 画面サイズがオリジナルとは異なるので当然なのですが,移植3タイトルとも やはり細かいところでの違いはあります。 でも,それはやりこんだ人にしか気づかれないような程度の違いで しょう。敵の出現頻度や安全地帯などの。 そのあたりに関しては、データを調整し、できるだけ違和感なくプレイできる ようにしてあります。 次の「出たな!!ツインビー」では、「ジェノサイド2」や「スターウォーズ」 と,大作3本が重なったわけですが,負けない自信はありましたか? やはり困りました。ほかのメーカーさんに,「お互い首を絞めるのも なんだから,発売を1カ月遅らせませんか」なんて電話しようかとまで 思いました(笑)。 あのときはユーザーも困ったと思うんですよね。なにしろX68000の ユーザーは学生が多いですから,毎月何本もソフトが買えるとはかぎらない。 正月が控えていたのが,唯一の救いでしたね。本当にいいゲームぱかり でしたから。 我々も「ジェノサイド2」にはハマリましたし,「スターウォーズ」には驚かされ ました。 あのときはジャンル的にはバラバラでしたが,去年は同じジャンルの ものが固まって出てしまうことも多かったんですよ。縦スクロールシューティング ぱかりとか,横スクロールシューティングぱかりとかいう具合に。 「パロディウスだ!」のときはまだ横スクロールが少なくて,なんで 横スクロールが少ないんだろう,やはリスプライトの制限からかなどと 感じましたが,その前後に増えましたね。やはり作る側もみんな同じことを 考えるんでしょう。”次はこのテのゲームだ!”と。 6位の「生中継68」は初めてのオリジナルですが,オリジナルと 移植ではどちらがやりやすいですか? 移植というのは目標となるイメージが存在するので,作りやすいことは たしかです。でも,単純作業になりがちですから,創造性といった意味では 面白味は半減しますね。オリジナルの場合はこれが完成という境界線が ないので,こまででよしとするかが常につきまといますから,結局どちらとは いいきれません。しかし,最近のアーケードゲームは高機能になって きているので,今後は逆にオリジナルのほうが作りやすいのではないだろう かと思います。 野球ゲームにしたのはなぜなんでしょう。 スタッフの中に野球好きが約1名いまして,その意欲が反映されました。 わりとアメリカっぽいというか,派手な仕上がりになっていますよね。 基本コンセプトはタイトルが示すとおり,テレビの野球中継です。そこをかなり 意識して企画,画面構成を決定していきました。まさに,ビール片手に楽しむ ゲームといったものを目指しています。あと,「脱フアミスタ」も意識しました。 見ているだけで十分楽しいです。 ただ,最初にやってみるとやはり「ファミスタ」のくせが出てしまうということも あったようですね。同じ動作をするのにも,視点によって操作するキーが違う ということもありますし。むずかしいと感じた人も結構いるようです。 「生中継68」にはこれまでの野球ゲームには見られなかったほどに 力の入った音楽がつけられていますが,音楽についても移植よリオリジナル のはうが作っていて楽しいですか。 移植のときでもMIDI音源では思いきったアレンジができますし,特に どちらがということはないですね。 X68000を使うにあたってなにか参考にしたものはありますか? 「モトス」の音楽などを聴いていて、感じはつかめましたね。 苦労したのはどんな点ですか? やはり効果育との兼ね合いです。 「出たな!!ツインピー」などはしょっちゅうしゃべりまくってますからね。 PCMはひとつしか鳴らせないわけですから、それをいかにごまかして しまうかというところに苦心しました。 無理をすれば何音か同時に鳴らすこともできるけれど,重すぎて ゲームにならないでしょうね。あと,MIDI音源に対応している一方で,内蔵 音源のほうが気合いが入っているように思えるときもあります。 やはり,標準装備の内蔵音源のほうがメインになりますから。そちらを 大事にしています。 まあ,X68000の場合はMIDI音源の普及率が高いとはいえ, さすがに半数以上は持っていないでしょうから。あと,SC−55へはすぐに 対応されましたが。 発表があってからすぐに資料などを取り寄せて,これはいけそうだ ということで対応できました。 * * * 最新作の「グラデイウスUI」では驚異のスピード移植でした。 かなりきつい思いをしましたが,完成度は高いと自負しています。実際, よくここまでつくれたなあと自画自賛しています。取り扱い説明書や 設定資料集もいい出来だと思います。 では,最後にひとこと。 “GAME OF THE YEAR”では次回の優勝宣言までしてしまって, なんかもうしわけないんですが,なにせ我々も1番が好きなもんですから。 次回の“GAME OF THE YEAR”でも皆さんよろしくお願いします。 |